060turboの組立記

X68000

2008年くらいにSHARPのX68030というコンピュータのMPUアクセラレーターを作成したことがあります。偶然入手する機会があったのですが何も分からない状態で勢いだけで向き合ったのでえらい苦労した覚えがあります。

2025年の今、改めて整理しておこうと思います。ここでは部品の入手等についても触れていますので060turboオーナーの方で故障品を修理したいという奇特な方(オイ には役に立つ情報があるかもしれません。

このページについて

この記事は2009年2月から別サイトに書いたものを復活させたものです。
3回ほどサイト移転をしており、その度サイト名や投稿者名が変わっているのでご覧になった方の中には不思議に思われた方もおられるかもしれません。

この度、ブログ立ち上げに伴いデータを探したところ発掘できましたので再度整理してここに転載しておきます。2025年時点での感想などは注訳という形で追記しておきます。当時10ページにわたって書いたものを一つにまとめていますのでかなり長い記事になります。また、すでに手に入らない部品等もあるかと思います。それでも誰かの何かに役に立つことがあれば幸いです。

近年はエミュレーターを使用した実機(ZUIKI製 X68000 Z)なども出ておりますが、オリジナルの実機も楽しいものです。大切にしていきたいですね。

組み立ての準備

当時、満開製作所の060turboを探していたところ、060turboの基板を入手することができましたので組み立ててみました。一部の部品は実装済みですが、実装されていない部品があります。

これがその基板です。

この基板、ITL版とのことで、満開製作所版といくつか異なる点があるようですが、細かいことは後にして、とりあえず部品を探します。幸いispLSI等は実装済みですのでそれほど難しくはないでしょう。

まず、回路図をPenguin’sBARさんから引っ張ってきます。ispLSIの内部論理も置いてありました。
このように公開していただけるのは大変有難く感謝です。(現在リンク切れ)

で、この時点で足りないものは何か?

MC68060(MPU)1個
68060用ソケット1個
68030用ソケット2個(1個は本体間調整用)
インターフェイスソケット1個(68EC030ピン)
水平型SIMMソケット1個
fuse内蔵タンタル(16V22uF)7個
DIP-SW(4連)1個
集合抵抗(4.7kΩ)1個
ポテンショメータ(200Ω)1個
060モード用LED1個
030-060モード切替SW1個

 それと

EPROM(IPL用)         2個

MC68060はとりあえずMMU内蔵のLC相当品(ECの75MHz)を持っていますからこれを仮に使いますが、FPU内蔵のXC68060RC50Aをお借りすることができました。

悩んだのは、コンデンサの容量・・・。回路図を見てもコンデンサの容量は書いてありません。
パスコンで20V100uF位かな・・と思いつつ製品版と同じ容量にしたかったのでその筋の方に問い合わせました。

お返事を待ちつつ、水平なSIMMソケットをジャンク基板から取り外す作業をしておきます。
その他、抵抗アレイやDIP-SW等は手持ちやジャンク箱から調達・・・・。

そうしているうちにお返事を頂く事ができました。

 ・コンデンサは16V22uFまたは10uF。パスコンなので全部22uFでもOK。
 ・VR1は電圧調整用。面倒なら3.3V出力の1085に変更でOK。
 ・基板の電源はI/Fソケット経由。電源から引いてきて強化しても良い。
 ・ispLSIは基板実装後書き込み。

また、

・コンデンサはfuse内蔵のタンタルコンを使用してください。

との事でした。

面倒そうなVR1ですが、これは200Ωの可変抵抗で調整可能のようです。
計算上は・・・Vout=1.25*(1+(R1/R2))+Iadj*R2 で出るようです。
R1が101ΩなのでVR1(R2)は166Ω位の調整で行けそうです(多分・・・)

・・・・・これはMPU抜きで実装してみて電圧計りながら調整すればよいでしょう。
3.3VはMPU電圧ですがMPUがついていなければ壊れることありません。
(なんで可変出力型のレギュレーター使ったんでしょう?今なら固定出力の1085CT-3.3を使います)

とりあえず準備は整ったので部品を注文します。

注文先は下記の通りです。(2025年時点で運営されていないショップがあります)

 コンデンサ:シルバー電機神田営業所
 ポテンショメータ(コパルの高信頼密閉型):RSコンポーネンツ
 68030用ICソケット:くるくるバビンチョップ(X68k.net内)
 68060用ICソケット:西日本常盤商行
 本体間I/Fソケット:     ”
 その他は、手持ちやジャンクから持ってきます。

ソケット類の実装

とりあえずSIMMソケットや030用ICソケット等を付けます。

※今思えば、SIMMソケットはMPUの動作確認が終わってから実装した方が良かったです。ABTやispLSIを外すときに非常に邪魔になりました。

動作モード用のLEDや切り替えSWは間違って差し込むと故障を招きそうですのでこのようにしました。

そのうち060用のソケット類も揃いました。

68060に使うソケットと本体間に使うI/Fソケット

MC68060に合うものが無かったので、適当に注文してピンを折るつもりでしたが・・・・。
裏からラジオペンチで押したらサクッと抜けました。

歯もげになる060用ソケット

ソケットの準備ができたところで基板に取り付けます。

数か所仮留め。傾いていると面倒ですから。大した作業ではないですが緊張します。
ついでにコンデンサ類も付けてしまいます。

青いセラコンは何で付けたのか覚えていません。

大方、完了。

本体に装着しMPUの電圧を確認します。

タンタルコンデンサなので極性のチェックは何度もしました。

電圧調整のボリュームは反対にしていたようで全然違っていました。
ここはしっかりしていないとMPUに損傷を与えてしまいます。
調整したら動かないようにネジロック等を塗っておきます。
(写真の面実装コンデンサが赤いのは交換した印です。10年後に再交換予定です。)

あとはMPUを取りつけて本体に装着します。
IPLのROMは060turboを取りつける前に先に取り付けておきます。

 そして電源ON!

 ・
 ・
 ・
 ・

あれ~反応がないんですが(汗;;

CPLDの書き込みが必要

部品は実装した、MPUも取り付けた。基板には問題ないはずだ。なぜ動かない。
しばらく基板を眺めていましたが、大事な事を忘れていました。

>ispLSIは基板実装後書き込み。

ぐは~
まだ論理が書き込まれていないんだ! と、ここで気が付きました。

・・・これじゃただの板です。

・・・・PLDの論理書き込みなんてやって事無いんですががが。(PLDなんてよく知らんし・・・)

なんてことだ、と思いながら・・・・ispLSIについて調べてみると下記の事が分かりました。

 ・書き込むソフトが必要
 ・書き込むにはプリンターポートかUSB経由
 ・書き込むにはケーブルが必要

・・・・うは~、こりゃ未知の世界です(大汗;;
無知もいいところでした。

しかし諦める訳にはいきません。数名の方のご協力も得ており「やっぱり駄目でした」では申し訳が。

なによりせっかく入手した68060で動かせないのがイタイ。

少し頭を冷やして冷静に調べて見ます。

その結果、ispVMが見つかりました。これで書き込めるようです。

あとはケーブルですが・・・。USBは高いので却下。
パラレルポートのやつは自分で作れるようですが・・・よくわからないので基板を分けていただいた方に相談。
 
すると、ケーブルの配線図を送って下さいました。
ググっても見つかるのですがChaNさんのThe Electronic Lives Manufacturingに掲載されている
回路図で書き込みが出来るようです(楽しい電子工作のPCインターフェイスの活用内に掲載)

しばらく眺めていましたが、別に難しい訳ではないので早速部品を調達します。

ちょうどマルツパーツ館に東芝の74HC367や2SA1048がありましたので、抵抗等も含めて注文。
あと・・・・・D-subのコネクタですが、これはジャンクが転がっていますから基板から調達します。

故障したPC-98Do+のマザー・・・

↑これは倉庫に放置していたPC-98DO+のマザーです。

PC-88とPC-98のソフトが走るやつでPC-98側の速度が286相当と言われていたヤツです。保管していたところ内蔵の電池が液漏れし88モードが起動しなくなったのでバラして倉庫に突っ込んでおいたものです。いやぁ~、こんなところで役に立つとは・・・・。(※2025年の今、Do+はきちんと修理しておくんだったと後悔・・・

で、ダウンロードケーブルの方ですが、中1日程で部品が届きました。

74HC367は在庫限りとなっていましたので予備をとっておきました。
で、回路図通り配線します・・・・。
残念ながら裏はお見せできません。酷いもんです(w

うまい人はこの1/4程度の面積でやってしまうんだろうな・・・

ダウンロードケーブルが完成。あとは書き込むだけです。

ちなみに論理は満開版とITL版が同じものかどうか分かっていませんが、この際気にしないことにします。

さて、書き込む段階でまたしてもハマりました。
何度やっても基板を認識しません。マニュアルによると各デバイス(ispLSI)を認識するそうなんですが・・・。
おかしいなと思いつつダウンロードケーブルを見ると2SA1048が逆に付いていました(オイ
しかし直しても認識しないのでおかしいなと思っていたら今度は68本体の電源を入れ忘れていました(^^;
 
68の電源を入れるとデバイスを認識し、無事、書き込む事に成功しました。

動くであろうと願ってX68030本体をリセットします。
で、結果がこれ・・・。

(;゚д゚) ・・・
(つд⊂)ゴシゴシ
なんか文字に色が付いているんですが(゚Д゚;)

なんで~

と思いつつ、この日は床につきました。
(このときIPLの画面は撮ってなかったのですが相当なゴミが出ていました)

スタティックカラムモードをOFFにせよ

え~・・・・。

なんとか動き出した060turboですが、
気のせいか白色しているハズの文字が青く光っていました。

もう一度確認してみるも・・・・これ青いデスヨネ!

やっぱり・・・どうも気のせいでは無いようですT_T

とりあえず一呼吸おきます・・・・。
実はこのときすっかり忘れていたんですが、

>一点だけ気になる点がありまして、
>これについての厳密な検証はまだ行ってはいないのですが、
>テキストVRAMが化けてしまったりスタティックカラムモードでの動作が不可能という事もありまして要検証かなとも思っております。

と言う忠告を受けていたのを思い出しました。

・・・・・これか! ということで68030本体の基板に手を入れます。

ノーマルの状態だと、スタティックカラムモードはONになっています。
(っていうか、スタカラONで起動したじゃん)とか思いながら早速YUKIさんの隣にあるSW1にジャンパ飛ばします。

我らがアイドル、カスタムチップのYUKIさん。映っていないけどSAKIさんもいるよ!

スタカラをOFFにして再度挑戦・・・

出ましたっ!
 
ちなみにこのマシンは予備の030なので、常用している030にも装着してみましたが・・・・
こちらはスタカラONでは起動すらしません(個体差ってやつですか?)

試しに悪魔城ドラキュラを動かしてみました。
特に問題なく動いています。この状態ではキャッシュの組込みをしていません。スピードは030と同じくらいでしょうか。

しばらくこの組み合わせで使ってみる事にします。

Cache ONでゴミが出る

しばらく使ってみました。

やはりキャシュONだと速いですね。草の根BBSが壊滅状態に近い今となっては、手軽にベンチマークソフトを入手することすら困難ですが、ある同人ソフトについていた簡易ベンチマークではかなりの数値を出しています。

もっとも周辺が遅いので正直MC68060の性能が活かされているとは言えないのでしょう。
もし本体側が68060に最適化された設計だとどれくらいのパフォーマンスになるのか。ちょっと気になるところですね。

さて、スピードに慣れてくると、やはりキャッシュON時のテキストのゴミ(化け)が気になります。
スタカラをOFFにした後、テキストのゴミが消えたかのように書きましたが、実は完全に解消されている訳ではありませんでした。IPL画面にも少しゴミが見られました。

X68030のIPL画面。WORKSTATIONのRとK、8に化けが出ています。

キャッシュOFF時にはほとんど出ませんが、ONにするとHuman68kのファンクション表示に余計なラインが出たり、黄色いテキストのゴミが出るなどの異常が見られます。
キャッシュONでも、たとえば鎌田さんのexx.xでデータキャッシュのみをOFFにしたり命令キャッシュのみをOFFにしたりするとゴミの出方が変化します。

この現象、満開版では出ないようです。(そりゃそうだ)
こうなると満開版とITL版の差が気になります。
私は満開版を持っていないので、どのような差があるのか聞いてみました。

その結果、積んでいるLatticeのispLSIのスピードグレードに差があることが分かりました。

具体的には・・・

 ITL版が ispLSI1016-60LT44・ispLSI2032A-80LT44

 満開版は ispLSI1016-90LT44・ispLSI2032-135LT44

ITL版の1016は60LT44ですから対応している最大周波数は60MHz?
満開版の1016は90LT44ですから最大90MHz?  ・・・差が30MHz?(・・・・という認識でOKなのかな?)この認識が正しければ2032Aについては相当差があることになるんですが。

そういえば、DIP-SWの秘密モード。ONにすると75MHzになるはずですが、リセットするたび62MHzや67MHzと変化して不安定でしたので、もしかするとこの辺りが原因かもしれません。

もっとも私の場合は常用50MHzを予定していますから問題ないような気がします。
50MHzでの動作前提ならこの部品選定で問題ないはずですが・・・。

しかし、他に違いがないとすれば原因はココしか考えられません。
 
などと思いつつ・・・・

ispLSIを探しますか(グハ

ispLSIは高いなぁ

えー、ispLSIって結構高いんですね。

2032Aの135LT44はチップワンストップで取れそうです。一個1000円と回答頂きました。
これは一個から購入できるようです。

で、
1016については一個4700円で最低10個から・・・・(T T

張り替えサービスやるんなら考えてもいいですが、張り替えてどうなるか分からないものに合計47000円はちょっと。
1016についてはもう一件見積りを取っていたのですが、そこは最低5個からで一個3250円でした。

悩んでいたところ、チップワンストップにispLSI1016-80LT44があるではないですか。
これは1個から購入可能。お値段1798円也。ワンランク下になるけど仕方がありません。

・・・・と言う事で80LT44に決定!

この3個を張り替えてどう変わるか・・・・。
2032Aはともかく、1016は余裕という観点からはギリギリっぽいので張り替え後の挙動が楽しみです。

発送には受注後9日かかるとのことですので、ここでしばらくマッタリと休憩を取ります。

ispLSIが届く

頼んでいたLatticeのispLSIが届きました。

この数でこの梱包は大げさではないか・・・・。

これらがそのブツ

基板のispLSIを外します。

グレードの低いispLSIが剝がされた060turbo。

外したのはこちら↓

貼り付け後・・・。
これで直ればいいのだが・・・・。

お粗末な半田仕上げ・・・・。とりあえずブリッジはしていない模様。

結果は・・・・・。
駄目でした~。

まだIPLの表示が一部青色に化けています。リセットで化けの位置が変わります。
うちの環境では、これが出ているとキャッシュONで100%ゴミが出ます。
ゴミの出方もispLSI張替え前と変化なし・・・・。

これは失敗に終わりましたorz

残るICはTSSOPのABT?

さて・・・・ispLSIを張り替えても変化がなかった060turboですが、正直行き詰まり状態です。
1016の80が90で無いのが原因とは考えられません。

さて、ここで残るICはTSSOPパッケージのABT16373Aのみとなりました。

これですね・・・・・↓。

TIのABT16373A

・・・・・・こいつが6個も張り付いています。

満開版のABTを調べて頂いたところ、ロットが56A740Jとなっていました。
ITL版は13ARYDKです。

これの個体差かなぁ・・・・と思いながらABT16373Aを注文してみました。

ロット87ECNXK品です。

新しいABTが届きました。
交換していきます。

ついているABTを外します。

(コンデンサがOSコンになっていたりセラコンがついていたりしますが、周辺部品で変化が無いか試したときに交換したり追加したものです。特に変化はありませんでした)

・・・・・何とか付けました。

ブリッジは無い模様・・・・。

さて、これでどうなったかというと・・・・・

なんと起動せず~。
マジデスカ!!(T T)

030モードはOKみたいですが・・・・。
060モードはピクリともしません。

残念なことに張替えに失敗したようですT T
※この時点ではABTが合わなかったと判断しましたが、もしかして実装ミスではなかったか?と思ったりも。思い込みは怖い。(2025年10月)

TIの方にアドバイスをもらう

見事にやってしまった感のあるABT張替えですが、まだまだ諦めがつきません。
作業中にABTを壊したかロットによる相性か・・・・。
いずれにしても基板は壊していないと思うので(多分)やり直しは可能なはず。

そこで、TIさんにABTの個体差について問い合わせをしてみました。
具体的な解答についての掲載は控えますが・・・

 1.すべての半導体には個体差があり、設計がギリギリだと個体差の影響を受ける。
 2.インピーダンスの高いMPUに直結されており反射波が発生し波形を歪ませており、
   正常なバスデータ伝送が出来にくい可能性がある。
 3.解決には波形観測が必要。
 4.当該デバイスはnSの一桁オーダーで動作するデバイスで、安価な100MHz程度の
   オシロスコープではトラブルシュート出来ない。ロジックアナライザは論外。
 5.正常に動作しているロットで試す。

このような感じでした。

この解答を頂いた直後、担当者の方より直接電話を頂きまして、X68kの存在をご存知との事でした。(話しぶりから元ユーザーの方かな?と思ったり)
しばらくの間事情を話してみたのですが・・・・、当方の機材や私の脳味噌ではこれ以上の追求は無理っぽい感じでした。

最後に、動くという確証はないが正常に動いている満開版に合わせるように、「末尾Jのロットで試して見てください」とアドバイスをいただきました。

実はこの末尾は製造国を表すようで、Jとは日本製造とのこと。
製造国でそこまでバラツキがあるものかと思いましたが「入手できるなら試してみてください」程度の会話でしたが、やはりここまできたらやるしかないと・・・・(文章が変w

製造年については頭5から始まっているので1995年か2005年だろうと。
満開版発売が1998年頃なので1995年の日本製ということに落ち着きました。

さて、95年製で日本製のABT16373Aとなると、現行品でもあることからそうそう見つかるもんじゃないです。

相当数の業者を当たってみましたがどこもNG。98年製と言われるロットを入手しましたが末尾はKでした。

で、結局J品は見つからず・・・。

そもそも、この部分ってそこまでシビアなところだろうか?周辺のispLSIとかそこまで速いわけじゃないし。(←などと知ったかぶりを発揮する記載に穴があったら入りたい2016年な1月頃追記ですw)

そう思いながらABTのデータシートを漁っていたらTI以外にも各社からABT16373Aが出ていることに気がつきました。
「この際、他のメーカー品にしてみよう」と探していたところABT16373Bと言うものを見つけました。

Bって何? と思いつつデーターシート探してみますと、フリップス(現NXP)だけのようですが確かにABT16373Bが存在するようです。

普通、AとかBとか末尾に追加されるのって特性改善品等に見られると思うのですが・・・。
フリップスにはAが無いみたいです。他社A相当品なのでしょうか?データーシートを見たところ、同じようなのでこいつにしてみることにしました。

これがそのABT16373Bです。

74ABT16373BDGGと書いてある。

早速張り替えてみます。

で、結果は・・・・。

願いもむなしくゴミは消えず。

060モードの起動には成功しましたが、ゴミは消えず。
どうもABTが犯人ではなかったようです(T T)マタカヨ

ispLSIの罠

さて、無実のABT16373Aを犯人に仕立て上げるも無意味に終わり、結局基板を汚しただけという情け無い状況でこれ以上試すことがなくなっていました。

この間、CY7B991やispGAL等も不良や相性を考えて張替えしてみましたが変化なし。

・・・・もう、打つ手が無い。

きっと多層基板の内部とか、もうそういう手の付けられないところが違うのだろう、と結論付けていたところ、ある方より情報を頂けました。
そしてITL版に関する情報を頂きました。転載とのことでした。

   >「ispLSI2032無印がディスコンで、後継の2032Aになっています。
   >もし完全同期回路でなかったり、トリッキーな論理を組んでいたりすれば、
   >わずかなタイミングのズレが生じるかもしれないです。

・・・・なるほど。
駄目もとでLattice社に無印2032と2032Aの違いを問い合わせて見ましたところ下記のような解答を頂きました。

「ispLSI2032と2032Aの違いですが、プロセスが0.65μ(Aなし)と0.35μ(A)と異なります。貴社で起きている問題との関連性には言及しかねますが、主な違いとしてご報告いたします。」

これはもしかすると・・・・。
早速ispLSI2032-135LT44を探しました。

それがこれ。

確かに無印の2032・・・。

早速張替えを済ませ論理を書き込みます。

結果ですが・・・・・。

(つд⊂)ゴシゴシ 治った?

拡大してみますが、IPL画面に青い化けは無いもよう・・・。
どうやらOKみたいです。

キャッシュの状態です。

確かにキャッシュONになっています。

次にHuman68k v3.02の画面

ispLSIの張り替え前は文字間に黄色いゴミが出ていました。(青いのは写りこみ)
ファンクションの表示も問題ありません。

ちなみに張り替え前のファンクションはこうなっていました。

異常時の写真を撮っていなかったので加工したものですが、張り替え前は黄色い線が出ていたのです。

スタティックカラムモードONで動いた!

こうなるとスタティックカラムモードが動くか気になります。
このモードはX68030の高速化に貢献しているモードです。是非有効にしたいところですが・・・。

試しにONにしてみましたところ・・・・
なんと、青い化けも出ず、IPL画面が問題なく表示されました。

うちの環境では2台の030のうち一台目は「青く化けながらも起動」した個体と二台目は「IPLすら表示せず」の個体でしたが、ispLSIの張替えで二台ともIPLがまともに表示するようになりました。
ITL版はスタカラONでは起動しないといわれていますからこれは進展です。

ただ、メモリチェック画面(SRAMに常駐するタイプ)でBus Errorが発生し、リセットでHuman68kが起動するもデバイス登録のところで止まってしまいました。(←2025年時点で思うにたまたま起きた可能性もあると思います)

試しにIC9の19-20ピン間のコンデンサ(040turboで有名になった動作改善処置)を外したところIPLの表示はするものの、Human68kは起動すらしなくなりました。

やはりスタカラONは諦めなければならないようです。

そういえばABT16373もTIの「A」からフリップスの「B」に変わっていますし、ispLSI1016の本来90MHzのところが80MHzになっています。
このあたりの差が原因とはあまり思えないのですが、かなり微妙なタイミングで動いているのは確かなようですので、いかなる差も影響として出るのかもしれません。

今更ABT16373Aに戻す気力も無いですしこのまま使う予定です。
(あ”、ispLSI1016は90MHz版を注文してしまったw;;)

テキストの化けが無くなっただけでも御の字です。

それにしても・・・・・後継品を使ったくらいで誤動作するほどジャジャ馬なんですね。
これをまとめ上げた満開製作所スタッフは凄かったんだな・・・・と感心するばかりです。(※2)

とりあえず・・・

”やった~(^◇^)“(ちょっと消化不良気味)
なんか、スタカラの件があるのでスッキリしませんが一応解決とします。2009/11/09

(※1)2016年追記
このときは動作しなかったのですが、なぜかS-RAMをクリアしたら動くようになったようです。下記の「その後」で触れています。こういう事ってX68000では良く起きる様な気がします。
現在ではスタカラONで問題なく使えています。ただし、余裕を持たせる意味でノーマルロジックで使っています。

(※2)
ここでの「感心する」には複数の意味がありまして、これはあくまでも個人的意見ですが、
プロセス違いの後継品を使った程度で誤動作するという事は本当にシビアな製品なんだろうな~ということ。あとはこんなのよく製品化して売る度胸がよくあったなぁ・・・と。
僕なら不具合クレームが怖くて仕方がないです(笑

ispLSI1016の張り替え

後日、注文していた1016-90が届きましたので張り替えてみました。

2個しか注文していないのに、またこの梱包・・・。

確かに無印1016-90です。

張り替えを完了しました。(洗浄していないので汚い・・・)

いろいろテストした後なのでABTにシールドを貼っていたりします。

・・・・結果は。

結論から申しますと、スタカラONは相変わらずバスエラーが出ます。
しかし、1016-80の時よりHuman68kのデバイス登録が進むようになりました。

まれにデバイス登録を終了するようにもなりましたが、実用になるかと言うとそういうことではないので、やはりこのモードは諦めるしかありません。

・・・・何事も諦めが肝心。

これらの作業で、スタカラOFF・50MHzで使う分には全く支障がない状態に持ってこれました。
X68030本来のモードが使えないなど完璧ではないけれど、私としては手を入れた分納得出来る結果です。

本当にギリギリのタイミングで動いているような感じなので、余裕・信頼性という観点から見れば、もしかしたらこのモードはOFFで使う方が良いのかもしれません。※などと書いていましたが、スタカラONで動きますので安心して下さい。詳しくはその後↓を。(2016年1月追記)

ispLSIは中国在庫などリスクはありますがまだ購入可能です。
入手は困難になってきていますが同じ症状で悩んでいる方は挑戦してはどうでしょうか。

単にキャッシュON時のテキストのゴミを消すのなら、もしかしたら2032Aを無印にするだけで解決なのかも知れません。
確実なのは2032A用にロジックを改良する事でしょう。2032Aは現行品ですし。技術力をお持ちの方はこちらもお薦めかと思います。

最後に

私の060turbo組立記はこの辺りで終りにしたいと思います。
組み立てにあたっては、色々な方にお世話になりました。
CPLDも良く知らない私の様な者がこの基板をここまで動くように出来たのはご協力いただいた皆さまのおかげです。本当にありがとうございました。

その後

諦めが肝心と思いつつもその後も色々いじっていました。060モードでどうにかスタカラをONにできないか。

色々と試しているうちに030モードでもBus errorが出るようになりました。
「こりゃ、壊したかな」とかなり焦りましたが、SRAMのクリアでエラーが出なくなりました。060モードでもエラー出ず。

ここでスタカラをONにしたところ、なんと普通に動くではありませんか。本当に?とSW1を確認。確かにジャンパ外しています。

・・・・・これは。
そう思い、一時ノーマルロジックに戻していた論理を高速ロジックに入れ替えてみました。
結果、こちらはデバイス登録でエラー発生。スタカラOFFでは問題ありません。

なんとノーマルロジックではスタカラONでいけるみたいです。
(ispLSI張り替え直後はノーマル・高速の両方とも駄目だった”つもり”なのですが、いろいろやっているうちに頭が混乱したのでしょう)

となると、ノーマルロジック・スタカラONで使うか、高速ロジック・スタカラOFFで使うか悩むところです。
試しにHDDのゲームにベンチが入っていたので測ってみました。(DFというゲームについているやつです)

その結果・・・

[スタティックカラムON]

 ノーマル高速
cache OFF1494エラー
cache ON7587エラー

[スタティックカラムOFF]

 ノーマル高速
cache OFF14571875
cache ON75867873

(余談:ノーマルロジック・スタカラOFFでの秘密モード時(75MHz)では8500程度)

ベンチにもよるのでしょうが、この結果を見る限りスタカラの影響は僅かです。
それよりもノーマルと高速では結構な差が出ていますね・・・・。

ほかのベンチマークを試していないので何とも言えませんが、この結果を見る限り私の環境では
スタカラに拘るより高速ロジックでスタカラOFFで使用したほうが得策のようです。

※と書いていますが、現在は余裕を取る意味で、スタカラONのノーマルロジックで使っています。
老朽化が進む本体との組み合わせでは余裕があった方が良いだろうという考えです。
まぁ、タイミングがずれるほど老朽化すればどの道、動かなくなるでしょうけど・・・・。(2016年1月追記)

FAQ

公開することで怖い質問が来そうなので自作自演で先手打っておきます。

Q
私の060turboのispLSI張り替えをお願いできませんか?
A

勘弁してください。壊しても責任がとれません。

Q
張替えたら100%ゴミが無くなりますか?
A

断言はできません。X68030本体の個体差の影響も受けるようですし、場合によってはIC9の処置も必要だと思います。

参考ですが、私が試したX68030の製造番号を末尾以外ですが書いておきます。

1.431521●(IC103がSRAM付近に追加されているモデルです)
2.431245●(ispLSI張り替え前にスタティックカラムONで起動した個体です)
  
この2台ではispLSI張り替え後にゴミが発生することは無くなったようですが、
個体差があるマシンなので全てのケースで解決するかは分かりません。
ただ、やる価値はあると思います。

Q
秘密モード(75MHz)・・・・
A

1016を90に変更後75MHzに固定するようになりました。

リセットで73MHzになったりしますが、まぁそんなものです。

当方の実験ではバスエラーは出るものの、ダンマリになることはなく、騙し騙しベンチを起動出来ました。
さすがに速いですが安定しませんし、当然75MHz版の68060でやるべきでしょう。(2009/11/18)

その後、あることをやったら75MHzでもエラーが出なくなったような気がしますが多分気のせいです。(2011/4/17)

※再生産版(赤基板モデル)でも試してみましたが、デバイスそのままでECの75MHzが動きました。テキストにゴミはでますが動く事は動きます。気のせいかもしれませんが。(2016年1月追記)

Q
私の060turboが起動しません。というか寒い時期に起動しない気がします。
A

まずはX68030本体を壊れない程度に温めてください。それで起動する・起動率が上がるならあなたの060turboは高速化ロジックかもしれません。まずはスタカラをOFFにしてみてください。それでだめならノーマルロジックを書き込んでみてはどうでしょうか?

Q
その他、不明な点とかないですか?
A

ありません。

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